No.71 脳梗塞による運動障害と感覚障害

s-針葉

もし、自分自身や周りの人に次のような症状がみられたら、一刻も早く、ためらわずに119番通報をして救急隊を呼びましょう。「たいしたことがなかったら恥ずかしいから、もう少し様子をみてみようかな・・・」などと迷っていたら、その間に手遅れになってしまう危険性があるからです。

A 左右どちらかの体が「力が入らない」「動きが鈍い」「動かせない」

B 歯を見せて笑顔をつくると、左右どちらかの口元が上がらずひきつる

C 手のひらを上に向けて「前へならえ」をすると、左右どちらかの腕が下がる

D 左右どちらかの体が「感覚が鈍い」「しびれる」「お湯に触れると冷たく感じる、または異常に熱く感じる」

これらの症状は、脳梗塞の代表的な症状である「運動障害」「感覚障害」「言語障害」「視覚障害」「バランス感覚の障害」のうちの運動障害と感覚障害の例をあげたもので、A~Cが運動障害、Dが感覚障害に当てはまります。なお、Dの症状は、左右どちらかの体全体にあらわれることが多く、強さの差はあっても、指だけや足だけというように一部にあらわれたり、両手や両足というように左右の同じ部位にあらわれたりすることは一般的ではありません。

脳梗塞とは、脳の動脈が動脈硬化を起こして詰まり、そこから先の脳細胞に血液が正しく届かなくなるために、脳細胞が壊死して脳の機能が障害された状態のことです。動脈が詰まる直前には、血液が脳細胞に届いたり届かなかったりするために軽い症状がみられることが多く、その症状のことを前ぶれといいます。前ぶれは、何となく自覚してから数日間続くというものではなく、昨日は何もなかったのに今朝起きるたら気付いたというように、突然あらわれて、数分から数十分程度でおさまってしまうという特徴があるため、よくなったと勘違いして放置してしまうと、本格的な脳梗塞に移行します。

脳梗塞が起こると、その付近の脳細胞が担当している体の働きに支障が生じます。例えば、運動野付近では麻痺などの運動障害があらわれ、体性感覚野付近では感覚が鈍くなったり、しびれや感覚異常を感じたりするなどの感覚障害があらわれます。

また、その脳梗塞が右脳側にあれば左半身に、左脳側にあれば右半身に症状があらわれます。脳梗塞に限らず、もしもの出来事はいつどこで起こるかわかりませんので、日頃から家族や周囲の人と素早い対処法を確認しておくことも大切です。

①119番通報

通信員からの質問に詳しく答えるようにします。主な質問は災害の「種類」「場所」「内容」そして「通報者の氏名と連絡先」ですが、最初に災害の種類を答えた時点で適切な車両の出動準備が行われ、住所を答えた時点でその車両が現場に向かっています。

②対象者を横向きに寝かせる

対象者の肩と太ももを持ち、体を起こして、横向きの姿勢で安全な場所に寝かせましょう。ただし、それによって対象者が苦痛を訴えるような場合は、この限りではありません。麻痺のある場合は、麻痺のある側を上にします。下にしてしまうと、うまく飲み込めなかった唾液が肺に入り込んでしまう危険性があります。また、対象者の意識がはっきりしない場合は、手足をつねったり、胸の辺りを押すなどして刺激を与え、左右どちらかの顔だけをしかめたり、左右どちらかの手だけを持ち上げて振り払うしぐさをしたりしたら、脳梗塞が疑われます。

③救急隊に状況を伝える

救急隊が到着したら、対象者の服用中の薬や、過去に受診した医療機関や担当医の連絡先を伝えると、診断や治療に役立ちます。普段から、これらの情報をまとめておくと、いざというときに助かります。

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