No.20 卵とコレステロール

日本人の食事摂取基準(2010年版)では、コレステロールの1日の摂取目標値を男性は750mg、女性は600mgと定めています。この数値と比較すると、卵1個(50mg)当たりには約210mgのコレステロールが含まれているため、卵はコレステロールを多く含む食品といえます。

しかし、卵には血管壁にコレステロールが沈着するのを抑制し、コレステロール値を下げる「レシチン」というリン脂質も含まれています。つまり、卵をたくさん食べたからといって、血液中のコレステロール値はすぐには上がりません。「レシチン」を構成する「コリン」は、「アセチルコリン」という神経伝達物質の材料になり、脳を活性化し、記憶力や学習効果を高めてくれるので、認知症の予防や改善に効果があるといわれます。また、「コリン」は血管を拡張させて血圧を低下させるため、高血圧の予防や改善の効果も期待できます。また、卵には「リゾチーム」という酵素が含まれていて、抗菌、抗ウイルス作用を持ち、免疫力を高めてくれます。そのほか、卵にはビタミンA、B2、D、Eやカルシウム、亜鉛、リン、鉄などのミネラルも多く含まれています。なかでもタンパク質の質がよいことが特徴です。卵には私たちの体の構成成分として欠かせないタンパク質を構成する必須アミノ酸がバランスよく含まれていて、さらに人間のタンパク質の構成と似ていることから、利用率が高い良質の食品といわれます。

このように、卵はとても栄養価が高いため、完全栄養食品と呼ばれていますが、ビタミンCと炭水化物(糖質)が不足しています。卵は生で食べるだけではなく、目玉焼きやゆで卵、オムレツなど、調理方法のバリエーションが豊富なので、ビタミンCを多く含むサラダや炭水化物(糖質)を多く含むごはんやパンと組み合わせて、栄養素のバランスがよい食事を取るようにしましょう。

つまり、卵を食べることは、高コレステロール血症やアレルギー性疾患の人など、お医者さんからコレステロールの摂取量を制限されている人を除いて、多少コレステロール値が高い人でも極端に心配する必要はありません。コレステロールの取りすぎを心配するあまりタンパク質を豊富に含む動物性の食品を食べることを極端に減らすと、必要な栄養素が不足してしまい、低栄養状態になりかねません。ただ、取りすぎにならないよう、卵の摂取量は多くても1日に2個くらいまでにとどめましょう。

コレステロールで気をつけたいのは卵だけではなく、牛肉や豚肉に含まれる脂質も同様です。肉類の飽和脂肪酸は、血液中のコレステロール値を上げる働きがあるため、飽和脂肪酸を多く含む牛肉や豚肉を食べる時には、ヒレやモモなどの脂身の少ない部分を食べるといいでしょう。一方、魚の脂質は飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多く含まれます。不飽和脂肪酸であるDHAやEPAはコレステロールや中性脂肪の値を下げて血液の粘りを防いでサラサラにする働きがあります。いかやえびについても、以前はコレステロールの含有量が多いと考えられていましたが、現在の分析技術によると、実はそれほど多く含まれていないことがわかっています。

Comments are closed.