ダイエットをするとき、その方法の1つとして思い浮かぶのが、食事制限です。もちろん食事を抜くような極端なダイエットは逆効果になりますので、健康的にダイエットするための上手な方法として、ゆるやかに食事を制限していくことが第一条件です。その上で、どのような食べ物を減らすことがよりいいのかという問題になります。
エネルギーになる栄養素のうち、炭水化物(糖質)と脂質は、どちらも長期的に取りすぎると中性脂肪となって貯蔵され、過剰摂取は肥満や脂肪肝の原因になります。では炭水化物(糖質)を控える「低糖質ダイエット」と脂質を控える「低脂質ダイエット」ではどちらがより効果的なのでしょうか?
■炭水化物(糖質)の特徴
1gあたり4kcalのエネルギーを産生します。分解されやすく、すぐにエネルギーになるため、速やかにエネルギー源を供給するには炭水化物(糖質)の方が適しています。
■脂質の特徴
1gあたり9kcalのエネルギーを産生します。脂質は糖質に比べ、2倍以上のエネルギーを持っており、エネルギーを効率よく蓄えることができます。
炭水化物(糖質)の場合、中性脂肪へと蓄えられる過程にインスリンが関係しています。炭水化物(糖質)を取ると血糖値が上昇し、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは、血液中の糖質(ブドウ糖)を筋肉、肝臓などの組織に取り込ませる働きをしますが、このとき、ブドウ糖が取り込まれる先として脂肪細胞も含まれています。つまり、インスリンは血液中にブドウ糖が増えると、脂肪細胞にもどんどんブドウ糖を取り込ませて、脂肪の合成・蓄積を起こす働きもあるのです。「低糖質ダイエット」は、炭水化物を控えることで、血液中の糖質(ブドウ糖)の上昇を防ぎ、またインスリンによって生じる脂肪の合成・蓄積を制限することができます。
<低糖質ダイエットの注意点>
炭水化物(糖質)は「脳」と「筋肉」にとってとても大切な栄養素のため、極端な低糖質ダイエットをすると脳や筋肉に負担がかかります。炭水化物(糖質)が不足すると、まず「脳」がエネルギー不足と判断して、体が飢餓状態であると思ってしまいます。すると脳は蓄えている体脂肪をなるべく使わないように指令を出すので、私たちの体はなかなか脂肪が減らない体質に変わっていきます。また、「筋肉」に対しては、炭水化物(糖質)不足になるとインスリンの分泌が抑制され、筋肉の合成ができなくなってしまいます。筋肉は常に分解と合成を繰り返していて、通常は分解の方向に傾いています。エネルギーが不足すると、筋肉はエネルギーを節約するために自らを分解し、エネルギーが入ってくるとタンパク質を合成して筋肉の再生をおこないます。筋肉がタンパク質の合成を促すためには、ブドウ糖を取り込むことが必要なのです。つまり食事を取ることでその瞬間にタンパク質合成の方向に転じ、筋肉が合成され始めます。合成に転じる際に働くのがインスリンです。ですから、筋肉の合成にとってインスリンは大切なスイッチになっています。極端な低糖質ダイエットは、筋肉の分解をより進めてしまいます。食事制限する時でも、ごはんやパンを一切食べないということは避けるべきですね。
<低脂質ダイエットについて>
脂質を控える「低脂質ダイエット」は、効果が現れるには時間がかかってしまいます。それは、脂質が炭水化物(糖質)に比べ、すばやくエネルギーとして燃えにくい性質を持つためです。ただし、エネルギー量は9kcalと炭水化物(糖質)の2倍以上ありますので、摂取を控えることで得られるダイエット効果は大きいといえます。また、脂質の場合、炭水化物(糖質)のようにインスリンが体脂肪の合成や蓄積に関与することはありません。栄養素として摂取した脂質は、まず肝臓に運ばれ、そこから血液中を移動し、体の各細胞をつくる材料になったりエネルギー源になったりします。中性脂肪の形から直接、脂肪細胞に蓄積が起こることはないと、現在のところは言われています。
つまり、比較的早めに結果を出したい場合には「低糖質ダイエット」、じっくりと長期的に行う場合には「低脂質ダイエット」が有効といえます。