東洋医学では、五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)はそれぞれが単独で機能するものではなく、対応する臓と腑が互いに協力し合って機能すると考えます。
肺は大腸と協力関係にあり、経絡によって結ばれています。肺気の粛降作用と大腸が糟粕(※1)を外へ出そうとする伝導作用は、どちらも気が主体となっている作用です。肺の粛降作用と大腸の伝導作用は相互に協調して呼吸や排便を促進していて、肺の働きが低下して水(津液)が十分に届かないと、大腸の働きが低下して大腸のトラブルにもつながります。
大腸は、糟粕から余分な水分を吸収して便に変える働きをもっていますが、大腸が乾燥することによって便秘になってしまうこともあります。スムーズな肺の働きによって大腸の働きもスムーズになり、反対に大腸の働きが肺の呼吸を助けているともいえます。
秋の乾燥期にかぜをひいている人の中には、便が乾燥することによって便秘になる人がいますが、これは、乾燥のために肺の水(津液)が損傷されて粛降作用がうまくいかず、水(津液)が不要になったものを排出する働きがある下焦(※2)にまで到達しないために大腸も潤いを失ったためです。
一方で、普段から便秘がちの人の中には、辛い物などを多く食べ過ぎて便秘が悪化し、せきが出たり、胸が詰まることで呼吸が苦しくなる人がいます。これは辛いものを多く食べ過ぎると、大腸が乾燥して伝導作用が失調し、腑気(※3)が悪くなったため、肺気の粛降が影響を受けて呼吸が障害を受けるためなのです。普段の食べ物にもちょっと注意してみることも必要なようです。
※1糟粕・・・栄養素など必要なものをとった残り
※2下焦・・・五臓六腑の1つである三焦の一部。三焦は「上焦」「中焦」「下焦」の3つに分けられます。
上焦・・・気を取り入れ、邪気を排出する。みぞおちから上の部分を指します。
中焦・・・食べ物を取り入れ、血(栄養)に変える。みぞおちからへその上を指します。
下焦・・・不要になったものを排出する。へそから下の部分を指します。
※3腑気・・・大腸の動きをよくして排便を司ること。