No.34 秋の食養生(東洋医学)

東洋医学には薬食同源という考え方があります。健康な体をつくり、自然治癒力を高めるのに食べ物は欠かせません。秋から冬にかけては、気温が下がり、空気が乾燥しがちになります。このような季節は、乾燥を嫌う肺の機能が下がってかぜをひきやすくなります。体調を整えるためには、水(津液)の不足を補うことが大切です。体に潤いを与える作用のある食べ物を積極的に摂り、また旬の食べ物は強いパワーを持っていますので、「気(生命力)」を養ってくれます。

■肺を補う辛味の食べ物を摂りましょう

東洋医学では食べ物の味をその性質によって、「酸味(さんみ)」「苦味(くみ)」「甘味(かんみ)」「辛味(しんみ)」「鹹味(かんみ)」の5種類に分類します。これらは「五味」と呼ばれ、酸は「すっぱさ」、苦は「苦さ」、甘は「あまさ」、辛は「からさ」、鹹は「塩辛さ」です。この5つの味は、肝・心・脾・肺・腎に対応していて、それぞれの対応する臓腑を補い調整する作用があります。

さて、肺を補う辛い食べ物には、気や血の流れを促進し、発汗、発散の作用があります。特に肺気の巡りを活発にして、かぜの初期や食欲不振などに効果を発揮します。代表的な食べ物は「ねぎ、にんにく、わさび、にら」などがあり、空気の乾燥や気温の低下で働きの弱った肺や呼吸器の負担を軽減する効用があるといわれています。しかし、辛味を多く食べ過ぎると、大腸への負担がかかり、逆に大腸が乾燥してしまうので、食べすぎには注意してください。

■肺や呼吸器を潤す食べ物を摂りましょう

前述しましたように、秋は燥から体を守らないといけません。そのためには、肺や呼吸器に潤いを持たせる食べ物を摂ることをおすすめします。秋の食べ物の中で、特に潤いを与えてくれるのが「梨」です。梨は約90%が水分からできているといわれ、肺を潤し、せきを止め、のどの痛みや渇きを止める働きをします。また秋によくみられる「柿」や「ぎんなん」にも肺を潤す効果があり、特にぎんなんは気管支炎や咳止めにも効果があるといわれています。

■冬に向けて免疫力を高める食べ物を摂りましょう

冬はインフルエンザや風邪が流行する時期です。これらを予防するために寒い冬の時期に向けて、秋から免疫力を高める必要があります。免疫力を高めるのに役立つ食べ物には「きのこ類」があります。きのこ類は食物繊維が豊富であるため、便秘の予防にもつながり、肺と協調して働く大腸にも刺激を与えます。また、きのこ類に含まれる食物繊維の一種であるβ-グルカンは免疫力を高めます。寒さが厳しくなる冬に向けて、風邪をひきにくい体をつくっていきましょう。

■大腸の調子を整える食べ物を摂りましょう

秋は日本人の主食であるお米が収穫される時期です。白米だけで炊いてもおいしいですが、押麦を混ぜて炊くことで、大腸の働きを助ける食物繊維が豊富な麦ご飯になります。またパンを食べる際にもライ麦パンを選ぶことで、食物繊維を摂ることができます。大腸の調子を整えることによって、肺の働きを助けることができますので参考にされてみてください。

Comments are closed.