熱や温のお酒には、胃腸から体全体をあたためて内臓の機能を高め、気・血・水(津液)のめぐりをよくする働きがあります。代表的なのが、紹興酒、焼酎、ワインです。このうち、女性の月経の悩みには紹興酒と焼酎、美容の悩みにはワインが特に役立つといわれています。
●紹興酒
もち米と麦麹を発酵させて作った醸造酒で、アルコールの含有率は15~20%前後です。黄酒とも呼ばれ、熟成したものは老酒(らおちゅう)と呼ばれています。アミノ酸をはじめとする栄養素を豊富に含むことから、中国では「液体のケーキ」とも呼ばれているそうです。生薬は酒と一緒に取ると効果があがることから、生薬を紹興酒などに漬けて飲むことがあります。また、肉料理や魚料理を作る時には、臭み消しや風味付けのために多く利用されています。
●焼酎
穀類やイモ類などを発酵させたものを蒸留して作った蒸留酒で、アルコールの含有率は製法によって異なりますが、最大45%以下のものを指します。中国の東北部では、アルコールの含有率が40~60%前後のコウリャンやトウモロコシを原料とした白酒(パイチュウ)がよく飲まれます。近年、焼酎には血栓を溶かす働きのあることが注目されています。また、二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドを蓄積しにくいという特徴もあります。
●ワイン
ブドウの果実または果汁を発酵させてつくった醸造酒で、アルコール含有率は12%前後。地中海のシリア地方では、約8000年前とされるワインの搾り機が見つかっているといいます。近年、ワインに含まれるポリフェノールには抗酸化作用があることから、美容に役立つとして注目されています。また、心臓病の発生率を低下させるという報告もあるそうです。
●日本酒
米と米麹を発酵させてつくった醸造酒で、アルコール含有率は15%前後です。日本酒は、原料や製法によって大別されています。
「吟醸酒」は、60%以下に精米した白米を原料として、低温で発酵させたものであり、フルーツのような香りがします。
「純米酒」は、70%以下に精米した白米と、米麹、水のみを原料として発酵させたものです。
「本醸造」は、白米、米麹、水を原料として、アルコールを加えたものです。
「原酒」は、タンクで熟成したままの状態でビンに詰めたものです。
近年、日本酒には、がんの抑制作用があることが注目されています。他には、1日に0.4~1.5合の日本酒を飲むと虚血性疾患のリスクが下がることがわかっています。
追記1
●ビール(涼の酒)中国では、その栄養価の高さから、液体のパンという意味の「液体面包」とも呼ばれています。近年、ビールの原料のホップには利尿作用や抗酸化作用、抗菌作用があることが注目されています。また、マウス実験では、水の代わりにビールを飲ませた方に胃がん、結腸がんの発生率低下がみられたという報告があるそうです。
追記2
酒を飲みすぎたり、水分や生ものを取りすぎたりすると、体内に余分な水(津液)が増え、さまざまな部分にたまって働きを低下させます。この水(津液)のことを痰湿(たんしつ)と呼びます。長い期間に渡ってお酒を飲みすぎると、痰湿が胃に停滞し、食欲低下、胸焼け、悪心(気持ちが悪くて吐きそうな感覚)、下痢などの症状が現れます。また、痰湿によって血のめぐりが滞ることから、口の渇き、下の変色(暗紫色、舌のふちに黒い斑点が現れる)などの症状が現れます。