私たちの体は生命を維持するために様々な活動をおこなっています。その中で、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を維持するなど生命を一定に維持する働きをホメオスタシスといい、このホメオスタシスを保つために全身をコントロールしているのが自律神経です。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、うまくバランスを取りながら働いています。
<交感神経の働き> <副交感神経の働き>
・心臓の働きを活発にする ・心臓の働きを抑える
・血圧を上げる ・血圧を下げる
・消化を抑制する ・消化を促す
・排せつを抑制する ・排せつを促す
・筋肉を収縮する ・筋肉を弛緩させる
さて自律神経のメカニズムとして、日中は交感神経が優位になり、夜になると副交感神経が優位になります。朝、目覚めてから体が完全に活動できるようになるまでには、ある程度の時間が必要で、これは、目が覚めても、体を休ませておこうとする副交感神経の働きがまだ強く、体や脳の活動を活発化させようとする交感神経の働きが強くなるまでに時間がかかるからです。
また、副交感神経から交感神経への切り替えのときに血圧が上昇し、心拍数も増加します。そのような状態のときに運動を行うと、運動中は一時的に血圧が上昇するので、心臓や血管にかなりの負担がかかるわけです。そのため、中高年の方や高血圧の方などは特に注意が必要です。
<空腹時の運動は?>
睡眠中も内臓やその他の器官は生命を維持するために常に活動を行っています。そのため、必要なエネルギーが消費され、血糖値の低下がみられたり、発汗や呼吸に伴って、体内の水分量の減少がみられます。朝起きたときは、もっとも血糖値が低い状態にあるのです。
運動する際には交感神経が優位になり、より多くのエネルギーが必要となります。またジョギングなどの有酸素運動は、始めてからしばらくはブドウ糖が主なエネルギー源となり、ブドウ糖が尽きてきた頃に体脂肪が使われます。空腹時の運動は、一見ダイエットに効果的なようですが、ブドウ糖が脳の唯一の栄養源のため、極度の空腹時の運動は意識がもうろうとし、集中力が低下します。
また体脂肪が分解されると、血液中に遊離脂肪酸という物質が増加し、血液が濃縮した状態になります。体内の水分量も減少しているため、心臓に負担をかけたり、血栓ができやすい状態になります。
早朝起きてすぐの運動は、すがすがしく運動ができ健康によいと思われますが、実は自律神経やエネルギーの燃焼など体のメカニズムの点から負担がかかりやすくなります。運動は朝食を取って、交感神経と副交感神経の切り替えをしてから行いましょう。