子供の頃、転んで泣いていると、お母さんがよく「痛いの痛いの飛んでいけー!」と言って、痛いところを触ってくれたという光景を思い出します。それだけで、不思議と痛みが和らいだ気がする記憶はありませんか。この行為は、ただのおまじないではなく、脳の働きにも大きく関係しているということがわかっているそうです。
例えば、転んで膝をぶつけたとします。脳には「膝が痛い」という信号が送られ、患部に痛みを感じます。その時に、膝を触られることで、ぶつけた時とは別に「膝を触った」という2つ目の信号が脳に送られます。すると、脳は2つの信号を同時に処理しなくてはならなくなり、その対応に追われるため、痛みが分散されて緩和するという仕組みになっているわけです。私たちは、これを理論ではなく経験として知っていて、反射的に患部を触るという行為をしていたのかもしれません。
他にも、マッサージやアロマテラピーでは、これに近い効果が期待できるといえます。触覚や嗅覚を刺激することで、疲労した筋肉が発する痛みを、快感で緩和することができるのです。もちろん、マッサージなどには治療としての側面もありますが、脳の仕事を痛みの信号だけでなく、痛みと快感の2つに増やすという面でも効果的だといえます。
また、日常生活でストレスを感じた時には、そのことを考え続けるのではなく、脳に違う刺激を与える、たとえば、お風呂にゆっくり入ったり、美味しいものを食べに行ったり、スポーツをしたりと、自分がリラックスできる環境に身をおき、脳にストレスのもととなっている嫌なことを忘れさせる時間を作ってあげることが効果的です。