No.58 脳の不調は胃腸へ作用

胃腸は、脳のストレスの影響を最も受けやすい器官といわれるように、心身のストレスが原因となって、さまざまな胃腸の疾患を発症したり、症状が悪化すると考えられています。体の最上部にある脳と、臓器の下部にある胃腸には、どのようなつながりがあるのでしょうか。

脳と胃腸は、自律神経でつながっています。自律神経は内臓や血管などに分布し、消化や呼吸、血液の循環、代謝などの働きを調節するなど、人間が自分自身ではコントロールできない神経です。自律神経は交感神経副交感神経という相反する働きをする2つの神経からなり、交感神経は体の各器官を刺激して活発にし、主に昼間に作用します。一方、副交感神経は、消耗したエネルギーを回復させ、栄養素を補給するときに働き、主に夜間に作用します。

さて、自律神経の司令室は脳の視床下部という場所になります。嫌なこと(ストレスの原因になること)が起きたとき、脳の理性を司る大脳新皮質と、本能に忠実な大脳辺縁系との間で確執が起こります。その結果、大脳辺縁系が大脳新皮質に押さえ込まれ、我慢を強いられたときにストレス状態が起こります。ストレスは視床下部に影響を与えるため、ストレスが強いと、自律神経の働きが乱れるわけです。

そしてストレスなどによって交感神経の働きが強くなると、胃腸の働きが低下してしまいます。たとえば、海外旅行で慣れない土地へ行くと、その緊張から便秘になったりする人がいますが、これは脳がストレスを感じると、刺激を胃腸に伝えるためです。このように、脳の異常が腸に伝わり、腸が機能異常を起こします。

我々の日常生活で、ある程度のストレスは刺激となって、時にはいい場合もありますが、それが重度になったり、長く引きずることには注意したいですね。

なお、交感神経から副交感神経へのスイッチの切り替えは、緊張をといてリラックスすることが大切です。特に、夜寝られない方などは、このリラックスモードへの切り替えで随分と楽になる場合がありますので、いろいろと試してみてはいかがでしょうか。 

<交感神経>

・体を動かしたり、興奮、緊張を引き金に活発化する

・心拍数や呼吸数を増やしたり、血圧を上げる

・消化管の働きを抑制する

<副交感神経>

・交感神経とは逆に、くつろいでいるときや睡眠中に働く

・副交感神経が優位になると、心臓はゆったりと動き、呼吸は緩やかになる

・消化管の働きや消化液の分泌は盛んになる

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