肝臓は500以上の化学反応を起こし、私たちの生命を支えてくれる重要な臓器で、生体の化学工場に例えられています。日々黙々と休むことなく働き続け、多少無理をしても痛みなどの症状が出にくく、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。
そのため、自覚症状が出たときには病気が進行していたというケースが多いのも肝臓の特徴です。さて、肝臓の働きは大きく分けて代謝、解毒、胆汁産生の3つにわかれます。ここではまず、代謝をみていきます。
<代謝>
肝臓は小腸から吸収した栄養素を体内で利用しやすい形に変換して、全身へ送り出しています。このような仕組みを代謝といい、糖、たんぱく質、脂質の代謝が主になります。
■糖代謝
私たちは、ごはんやパンなどの炭水化物を主食としています。炭水化物を取ると、消化酵素の働きによりブドウ糖に分解され、小腸から吸収されて門脈に入り、肝臓へと運ばれていきます。
食後は門脈にたくさんのブドウ糖が流れ込みますが、膵臓から分泌されるインスリンの作用により余分なブドウ糖は肝細胞に取り込まれるため、肝臓から全身へ出て行く血液のブドウ糖の濃度は食後でも140mg/dl未満で正常に保たれます。
しかし、糖尿病の人はインスリンがうまく働かないため、肝臓でブドウ糖が十分に吸収されず、血糖値の調節ができなくなります。肝細胞の中に取り込まれたブドウ糖は、グリコーゲンに作り変えられ、肝細胞内に貯蔵されます。
そして、貯蔵されたグリコーゲンは空腹時に血糖値が下がると、分解されてブドウ糖となって血液中に放出されます。また、肝臓では新しくブドウ糖を合成することもできます。これを糖新生といい、主に筋肉のたんぱく質を分解して得られるアミノ酸を使って必要な分のブドウ糖を作り出します。
疲れたときや、頭をたくさん使ったときなどに、甘いものを食べると回復が早まったという経験がある方も多いと思いますが、健康な人は間食をしなくても肝臓での糖新生能力があるため、すぐに低血糖にはなりません。しかし、幼児はこの糖新生能力が発達していないので、間食を取ることで血糖値を維持しています。