胃の中はpH1.0~2.5という強烈な酸性ですから、元来、細菌は住めないものと考えられて
きました。仮に食べ物と一緒に何らかの細菌が入ってしまっても、酸によって溶かされて
殺菌されるからです。
ところが、この過酷な環境の中でも生きられるヘリコバクター・ピロリという菌が発見されました。
ピロリ菌は、胃の粘膜層や細胞のすき間でしっかりと生きていて、ピロリ菌の出す毒素が
原因で胃炎や胃潰瘍、胃がんなどになることが分かってきました。では、ピロリ菌はどうして
酸で死なないのでしょうか?実はピロリ菌自身が酸性に強いわけではないのです。
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を体内に蓄えていて、この酵素によって、胃液や胃の中の尿素を分解し、
アンモニアを作り出します。アンモニアは強烈なアルカリ性なので、胃壁の胃酸が中和されて
中性になります。
このようにして、自分の周囲を中性の状態に保ち、酸性の胃の中で生きているというわけです。
ピロリ菌は、抗生物質による除菌が可能な菌であり、この菌を除菌することで潰瘍の再発率が
低下し、胃がんの発生も抑えられることが分かっています。