腎臓病の原因は大きく2つのタイプに分かれます。
1つは腎臓自体の異常です。「腎臓がん」や糸球体に細菌などが感染して炎症を起こす「糸球体腎炎」、腎臓内に結石ができる「腎結石」などが挙げられます。もう1つはよくご存知の、糖尿病や高血圧などのほかの病気によるものです。いずれも放っておくと腎臓の働きはどんどん低下し、「腎不全」に陥ります。腎臓はある程度まで機能が低下してしまうと、もとの状態に戻すのが難しいため、早期に病気を発見することが重要です。
しかし、腎臓は異常が起こっても自分ではなかなか気づきにくい臓器です。異常をいち早くキャッチするためにも、いろいろな危険信号を知っておくほうがいいようです。
①尿を数字でチェック!
血液中の老廃物や過剰摂取した水分、体内の有害物質を排泄する尿には、個人差や気温、気候などの環境、水分摂取量などによって差はあるものの、その量や1日の回数などは以下のようにある程度決まっています。
~尿の目安~
トイレ1回当たりの尿量は? 約150~250ml(コップ約1杯分)。ただし、個人差はあるが、 成人では約300~400mlまでは我慢することができます。
1日のトイレに行く回数は? 4~7回(日中は4~7回、夜間は0~1回)が正常。 ただし、気温や発汗、摂取した水分量、緊張などの 精神状態によっても変化します。
1日の総排尿量は? 約1~2ℓ(牛乳パック1~2本分)が正常。ただし、 正常な場合でも、気温や水分摂取の状態、体調などで 変化します。
1回の排尿にかかる時間は? 約10~30秒が正常。40秒以上かかるようなら、 排尿困難。男性の場合では前立腺肥大の疑いも。
②尿の状態をチェック!
尿の色は、体内の水分量によって薄くなったり濃くなったりします。しかし、目安として健康な尿というのは、薄い黄色~薄い黄褐色をしており、それ以外の色の場合は注意が必要です。またにおいはかすかににおう程度で、沈殿物や泡立ちがないのが正常な状態です。
~こんな尿には要注意~
<色>
赤っぽい色や茶色っぽい色 血尿の疑いが。赤っぽい色は赤血球が混じっている ため、急性・慢性腎炎のほか、腎臓がん、腎臓結石 などが疑われます。
黄色が濃く泡も黄色い 黄褐色で、黄色みの強いときは、肝臓や胆道の 病気が疑われます。
白く濁っている 感染症の疑いが。濁りの原因は、細菌や細菌と戦った 白血球の残骸。腎盂腎炎や膀胱炎が疑われます。
<におい>
ツンとするにおい 尿路感染症の疑いが。膀胱炎などで細菌が繁殖すると、 ツンとする刺激臭がします。
甘酸っぱいにおい 糖尿病の疑いが。体内で糖の代謝異常があると、 肝臓で脂質を多く利用するため、ケトン体という 代謝物が尿中に出て甘酸っぱいにおいがします。
<状態>
沈殿物がある 腎臓結石、尿路結石があると、結石の小さなかけらが 混じることがあります。また、腎盂腎炎や膀胱炎などの感染症で も沈殿物が混じることもあります。
泡がたっている 腎臓病の疑いが。ぶくぶくとした泡立ちや、トイレに 流した後も泡が消えないようなときは、たんぱく尿が 疑われます。
③むくみをチェック!
腎臓に異常が起こると、体内の水分や塩分の調節ができず、余分な水分が溜まってむくみが生じます。むくみは、特に顔に起こりやすく、「まぶたの周りが腫れぼったい」「小じわが消えた」などの変化から気付くことがあります。また、手足がむくむこともあります。
「靴下のゴムの跡がくっきりと残る」「靴が履きにくい」「指輪がきつくなる」などがサインです。ほかにも、指ですねや甲を10秒ほど押して、くぼんだままなかなかもとに戻らなければ、むくんでいる証拠です。むくみが生じると、体重は増えるのに、尿量は減ります。むくみとともに、体重の変化にも気をつけましょう。
④急性症状をチェック!
腎臓に何らかの異常が発生すると、急性症状として熱が出たり、かぜのような症状が出たりすることがあります。熱以外にもむくみが出たり、血尿や、尿の量に変化があったりする場合は、腎臓病の可能性が高くなります。急性の腎臓病では、急に高血圧になるので、頭痛やめまい、ひどい肩こり、動悸を訴える人もいます。腎盂腎炎や腎臓・尿路結石では、腹痛や腰痛を伴うこともあります。
また次のような痛みがサインになることもあります。
■背中を叩くと痛い → 普段は何ともないのに、背中を叩いたときに痛みがあるときは、 腎盂腎炎や腎臓結石の疑いが。
■腰が痛い → 鈍い痛みや腰の重苦しい感じが続くときは、腎盂腎炎や腎臓・ 尿路結石の疑いが。
■わき腹が痛い → 左右どちらかのわき腹だけに特に強い痛みがある場合は、 急性腎炎や腎臓結石、腎臓がんの疑いが。
腎臓病が進行して腎機能が著しく低下してきた場合には、体内の老廃物の排泄がうまくできず、疲れがなかなか取れない、だるいなどの症状がでます。さらに、腎不全に陥ると、血液中に老廃物が溜まり、その毒素が全身に回ってしまうため、全身に強いかゆみ、下痢や吐き気、アンモニアのような口臭、まひやけいれん、最悪の場合は昏睡状態に陥ることもあります。こうなってしまう前に、早期発見・早期治療が重要です。