東洋医学では病気の治療法としてツボが利用されています。日本でも最近は、ツボ押しがリフレッシュのひとつとして、テレビや雑誌などで紹介されることが多くなりました。心庵でも施術の中心をなすものがツボ療法です。
さてツボに働きかけることが、どのように体の調子を整えていくのでしょうか。今回は「経絡」のしくみからみていってみます。経絡とは、生命活動を支えるエネルギーである気と血の通り道とされています。体内にある五臓六腑などのすべての器官をつなぎ、全身をめぐっています。西洋医学の血管や神経とは違い、実際に目で見ることはできませんが、全身の器官の協調関係やバランスを保ち、正常に働かせるには、経絡は欠かせないものです。また、経絡上にはツボ(経穴)が存在します。ツボは人間の不調があらわれる場所であると同時に、その不調を治療するポイントです。
経絡の本体は、体の比較的浅い表面をめぐっていますが、途中で枝分かれした支脈が体の内部に潜り込み、関連する臓器とつながります。ツボに刺激を与えると、気血の流れが良くなり、同時にその刺激が経絡を通って臓腑にも伝わります。そのため、関係する臓腑や器官の働きを整えることができるわけです。
経絡には体の表面を走るルートと、体内を走り内臓などに通じているルートがあります。中心となるのが「十二正経」と呼ばれる12本の経絡に「督脈」と「任脈」を合わせた14本の経絡です。この14本の経絡は、体のトラブルをみつけ、治療するうえで、とても重要です。これらの経絡上に360以上ものツボがあるからです。
十二正経は、十二経脈とも呼ばれる経絡の中心をなす経脈です。五臓六腑に心包(心をおおう外膜)を加えた六臓六腑につながる経絡で、肺経、大腸経、胃経、脾経、心経・・・というようにそれぞれに属する臓器の名称がついています。そして、名前のついた臓器を取り巻き、その働きを調節しています。
さて、ツボは経絡の上に点々と存在する、エネルギーの流れを調節するポイントです。日本では「経穴(けいけつ)」、中国では「腧穴(ゆけつ)」と呼ばれています。穴といっても実際に目に見える穴が皮膚にあいているわけではありませんが、そこから目に見えない「気」が出入りしているのです。気血の通り道である経絡上では、気血が滞ったり、停止するといったトラブルがおこることがあります。経絡は臓腑につながっているため、このようなトラブルは臓腑にも影響を与え、病気を引き起こします。反対に、臓器の不調が経絡に悪影響を与えることもあります。経絡や臓器に不調があると、その不調はツボにも反映され、関係する経絡上のツボに腫れやしこりやへこみなどがあらわれます。